かつて人類は、疑いを差し挟むことなく信じていた。
太陽が地球のまわりを回っているのだと。
それは単なる一説ではなく、
世界観そのものを支える「当たり前」であった。

同じように、古着は長く「使い古し」「誰かが一度着たもの」として、 価値の外側に置かれてきた。
しかし今日、それらは「ヴィンテージ」として尊重され、 かつて低く見積もられていたものの中に、 固有の魅力が見いだされている。

私たちは、問いたい。
疑われてこなかった前提こそ、
もっとも深く見直されるべきではないか。

「弱さ」や「障害」と呼ばれてきたもの。
そこに貼られたラベルや物差しの向こう側に、
まだ見えていない未知が潜んでいるのではないか。

私たちは「障害」を、特定の個人の欠陥ではなく、 人類がこれから越えなければならない課題として問い直したいと考える。
株式会社 clown は、その問いから始まった小さな会社である。

疑われなかった
「事実」を疑う

歴史の中で、人類は多くの「自明の前提」に支えられてきた。
天動説はその象徴である。
長く、太陽が地球のまわりを回るという考え方は、 宗教、政治、学問、日常の感覚にまで染み込んだ「常識」であった。
それを疑うことは、世界そのものを問い直す行為に等しかった。

私たちは問う。
いま現在、私たちが「自明の前提」として受け入れているものの中に、 同じような天動説は存在しないのか、と。

「障害」という言葉を
問い直す

「障害者」「障がい者」「障碍者」。
表記がいかに工夫されても、そこには「害」という文字が残る。

では、その「害」とは、 いったい誰にとっての害なのか。 その人自身にとっての害なのか。 周囲の社会にとっての害なのか。 あるいは、私たちの想像力の貧しさという害なのか。
私たちは、「障害」を次のように捉え直したい。
特定の個人が内側に抱える「欠陥」ではなく、 人類がいまだ越え切れていない、 環境・制度・認識の側の壁である、と。

AI が多くの知的作業を担い始めた今、
なお「障害のある人びとは健常者より絶対的に劣っている」と言い切れるのか。
この問いは、特定の誰かに向けられたものではない。
私たち一人ひとりに突きつけられている問いである。

株式会社 clown は、この問いを、
人類が越えなければならない障害であると考える。

私たちが疑うもの
― 物差し

私たちが疑うのは、何よりもまず「物差し」である。

能力や価値が、効率や速度だけで決まるという物差し。
都市と地方、健常と障害、新しいものと古いものを対立させる物差し。
一様な基準に人を押し込み、そこからはみ出したものを「異常」とみなす物差し。
これらの物差しは、ときとして、人をそのままの姿で見る視線を曇らせる。

私たちは、この順序を問い直したい。
人に宿る物語や気配が先にあり、 その後から、慎重に物差しを作り直すべきではないか、と。

「役に立たない」と言われてきたもの。
「弱さ」と呼ばれてきたもの。
「古い」と片づけられてきたもの。

それらを即座に排除するのではなく、
むしろそこに、世界を見直す鍵が潜んでいるのではないか。

私たちが目指すもの
― 時間の質

私たちが目指すのは、何かをひたすら「増やす」ことそのものではない。
人と人のあいだに生まれる時間の質を、 どれだけ深く、どれだけ丁寧に育てていけるか、ということである。

共に働く人が、自らの役割に静かな誇りを持てること。
これまで周縁に置かれてきた人びとが、 欠かせない存在として受け止められること。
一度は役目を終えたと見なされたものが、再び誰かの日常を彩ること。

その循環のなかで、「ここにいてよかった」と感じる瞬間が、 少しずつ増えていくこと。

このような状態を、私たちは「豊かさ」と呼びたい。
目に見えやすい指標は、あくまでも結果にすぎない。
株式会社 clown の関心は、 その裏側にある関係性と時間の質に向けられている。

古着という媒体、
人と仕事という場

私たちが扱うのは古着である。
一度は手放され、価値を失ったかのように見える衣服である。
しかし、一着の服には、 用いられてきた時間、刻まれた皺、褪せた色彩が宿っている。

それは、前の持ち主が過ごした「未知の物語」そのものである。

同じように、「働きづらい」とされてきた人びとがいる。
そこに貼られたラベルの奥には、まだ誰も知らない可能性という
「未知」が広がっている。

私たちは、古着と人と仕事を結び直すことで、
見過ごされてきた可能性に光を当てたいと考える。

仕事とは、単に時間を費やす行為ではない。
自らの存在が、世界のどこかと静かにつながるための、 一つのかたちである。

哲学としての営み

私たちは、日々の営みそのものが、
本来は哲学的な問いに根ざしているべきだと考える。

何を大切にし、何を手放すのか。
誰とともに歩み、誰を見落とさないと決めるのか。
どのような世界を、日々の選択によって形づくるのか。
これらの問いに対して、言葉だけではなく、 具体的な行いによって応答し続けること。
その過程で、最短距離だけを善とみなさず、 回り道や失敗もまた、かけがえのない一部として引き受けること。

Our Philosophy

株式会社 clown は、宮廷道化師のように、笑われることを恐れない。
その笑いの陰で、静かに問い続ける。

価値とは何か。
弱さとは何か。
幸福とは何か。

既成概念を脱ぎ捨て、
古着という「未知」を、
人という「未知」を、世界に纏わせていく。

それが私たちの仕事だ。